慈眼寺 副住職ブログ

観音菩薩とは何か。(2)「観音の履歴書①」

先日は観音菩薩の名前の由来、出典となる法華経の話などで1回が終わってしまいました。いよいよ観音菩薩の性格についてです。近所の奥さんに「ブログ、長いよ」と指摘がありました。気をつけます(汗)簡潔にいきます。

法華寺

ちなみに上の写真は個人的にすごく好きな法華寺の十一面観音。蓮が最高のバランス。木目のよさをそのまま生かしています。

①性別

 これは如来ではほとんど同じ答えになりますが、性別は、ありません。そもそも如来までくると男か、女か、などといった性別を超越した存在になりますので、男か女かという問いはあまり意味を持ちません。さらに観音経では「婦女身得度者、即現婦女身而為説法」というように女性には女性の姿をして現れ、男性には男性の姿をして現れるような記述もあります。

しかし質問したい気持ちはわかります。私が実際子どもの時の謎でした。「この人、どっちやねん」と。特に観音さまは女性っぽいですから。そのくせヒゲが生えてる。「女性っぽくてヒゲが生えてる」というとあらぬ方向へ話がいってしまいそうですが、そもそも「アヴァローキテーシュヴァラ」という梵語は男性名詞でして、観音菩薩は男性の意味合いが強い。しかし以前言ったようにバックボーンは女神さま。男性の器の中に女の本体。最古系の観音菩薩は水瓶を持ちますがこれは豊穣の女神の持ち物でもある。さらに観音は蓮華を持つことも多いですが、これは元来生命の源である女性器を意味する。男性の名前に女性原理。「女性っぽくてヒゲが生えてる男」と考えてもいいですが、もっとポジティブに考えますと、男性原理と女性原理の融合=生命そのものと考えることもできます。

②住所

補陀落(ふだらく)というインドのはるか南方の島にある山らしいです。この「ふだらく」という当て字感満載な名前はやはり当て字で、サンスクリットの「Potalaka=ポータラカ」に無理やり漢字を当てたものです。チベットの「ポタラ宮」と同じ由来で名付けられています。ただ、中国の伝承では揚子江河口の沖合に「舟山列島」というところがあり、そこの定海県の「普陀山」とされる場合もあります。この補陀落はどこか?というのは昔から色々な人の興味をひいいたようで、玄奘もまた南インドのコモリン岬あたりじゃないかと『大唐西域記』に書いています。

 日本では「補陀落渡海」というムーブメントが起こったことがあり、みながこぞって南の観音の国を目指してほぼ入水自殺という航海を繰り返しました。このことは有名なルイス・フロイスやガスパール・ヴィレラなどの宣教師が目撃し、「悪魔の儀式」などと評しています。この「補陀落渡海」は非常に興味深い現象で、観音が現世利益の仏であると同時に、来世での救済をもときには司る仏であることを示しています。

 ご近所付き合いは大切なので、今日は履歴書の片面で一旦切ります。