慈眼寺 副住職ブログ

コーチ(笑)

以前も書きましたが、誠にお恥ずかしながら、これはもう本当に謙遜ではなく、本当に恥ずかしいのですが、バドミントンのコーチのようなことを、2006年あたりから続けています。もちろん、全国大会に出たとかそういう実績はない、並のプレーヤーなので、「コーチ」と呼ばれるのは恥ずかしいので、「コーチ(笑)」と表現しています。要はクラブの顧問です。

最近、教員はクラブの顧問で負担が大きい、という記事がありました。本当にそう思います。自分がやったことのないスポーツ(そもそもスポーツ自体やったことがない人もいるのですから)の顧問をやらされ、土日も出勤、試合の引率。そして、顧問会ではバリバリでやってた先生たちが我が物顔で仲良くやってて、雑用だけ丸投げされたりもするのでしょう。その心理的、時間的負担を経済的に手当するには予算がない。お金をいくらもらっても嫌だという人もいるでしょう。

ただ、世の中には、いまだに頭の中がそのスポーツでいっぱいで、毎日の練習も全然苦ではなく、ただでも喜んで働くタイプの人はたくさんいます。そういう「教えたがり」の人は学校の外には結構いたりするのですが、昨今、学校をどんどん外に開くと、防犯上の問題もあります。学校というのは、良くも悪くも閉鎖的なところです。閉鎖的でなければならない部分もやはりあります。

かといって、素人の先生が妙にやる気を出して、閉鎖的な学校で思う存分独自の理論で突き進むのも考えものです。実際、未経験の先生によって非合理的なフォームのまま頑張ってしまい、取り返しのつかないようなクセをつけて、ケガをしてしまう人もたくさんいます。

私はむかし、そういう「しなくてもいい遠回り」をした経験があるので、別にインターハイに出る選手をつくろうなんておこがましいことは一切思いませんが、自分が働いている職場の生徒さんたちに、「普通」のフォームで、各人の持っている能力をできるだけ発揮できるようにしてあげたい、そう思って、この「コーチ(笑)」の仕事をしています。クラブにきているのに、人間関係とか、そのスポーツ以外のことで悩んでやめたり、楽しくなかったり、勉強の成績が下がったせいでクラブを諦めなければならなくなったり、そういうことがなるべくないように、それだけをする仕事として、アラフォーの身体にムチを打って、生徒と同じメニューをこなして練習しています。

自分が「コーチ(笑)」という「(笑)」にこだわっているのはそこです。世の中には上手な人はいくらでもいますから、そこで勝負する気は全然ありません。あくまで自分はコーチではなく「教師」。教師がたまたまちょっとバドミントン好きで、コートで楽しく打ってる。たぶんクラブの部員の中で一番楽しそうに打ってる。生徒も3年生くらいになったらときどき先生に勝っちゃう奴もいる。その日生徒のツイッターで「今日、先生に勝ったで」と自慢されてる。その程度でいい、というより、その程度がいい。そういう自嘲のなかにある「一寸の虫にも五分の魂」的な思いを込めて、「コーチ(笑)」という名称を使っています。

便利遣いしてくれたらいいとおもっています。邪魔になれば私をクビにすればいいですし、私はコートにいれば幸せな人ですから、先生は早く帰って家庭サービスもできます。「ちょうどいい」感じで利用してくれたらいいのです。先生も生徒も。私は好きでやってるし、「善意の第三者」ではなく、学校内部の人間ですからクビにするときもしやすいです。あくまで教員ですから勉強はめちゃくちゃ口うるさいですし。そのせいではなく、純粋に生徒が頑張った結果ですが、我が部は6年連続国公立大学現役合格だしてます。府大市大、大阪教育、奈良教育、阪大、去年は京大も出てます。密かな自慢です。もちろん頑張ったのは本人と担任の先生ですが。

自分語りが多くなりましたが、先日の試合で決して強くない私の部の生徒がこれまでにない好成績を収めました。別に「ワシが育てた」とふんぞり返る気はありません。強い子は最初から強いのです。その強い子がその実力をそのまま発揮してくれただけです。ただ、実力のある子でも、実力を発揮できず負けたり、昔のプライドが邪魔して結局辞めてしまうケースもたくさんいます。その子がその子らしさを発揮してくれたこと、そしてその子が頑張ってくれたことで、ほかの部員の目線が明らかに上を向くようになり、意識が高くなってくれたことが何より嬉しいです。

テストで点を取ることを教えるより、挨拶を普通にしたり、部員のことを思いやったりすることを教える方がはるかに難しいし価値があると思います。そして、プレーの技術的な面も、「壁を作れ」などの抽象的で主観的な身体感覚を人に伝えて、身につけさせることの難しさや、プレー自体の質を変えるために、概念枠組みをガラッと変えさせたりするのはとてもやり甲斐があります。今の子はきっちりセオリーとロジックを与えれば、きちんと反復練習をしてしっかり身につけてくれます。特に初心者で始めた子がそうやって身につけた技術で必死に戦う姿を見ると、毎年こっそり涙を拭いてます。今まで才能があったのになかなか伸びなかった子が、一つのプレーをきっかけにガラッとバドミントンの質が変わり、毎日毎日会うたびに強くなって、打てるのが楽しくてしょうがない、という顔をしているのを見ると、本当にこの仕事をやっててよかったと思います。

そういうわけで、勉強の専門科目より全然自信はないのですが、それより遥かに自分で楽しんで教えさせてもらってるのが、バドミントンです。

副住職兼、教師兼「コーチ(笑)」の私です。