自転車超あるあるの難問
副住職、珍しくもじもじしています
最近仏教の話ゼロで不真面目極まりないですね。
不真面目ぶりを徹底して今日も当ブログで最もアクセス数を稼げない自転車の話題をします。しかしこの問題、実に微妙な問題です。長年、この問題をどうすればいいのか、なかなかいい答えが見いだせずにきました。
そう。我々自転車乗りの一般人を散々悩ませる「ビアンキとルイガノの問題」です。
あるある、それほんと、あるある
ロードバイクに乗っていると知られると、会社の同僚や友人に必ず言われる問いがあります。
「俺、ビアンキとルイガノのクロスバイク買いたいんだけど、アレってどうなの?」・・・問①
「うわぁきたぁ~」と思います。仮に問①と名づけます。もう何百回聞かされたんだこの問いは!という気持ちです。ある人が答えます。
「あんなのダメダメ!カッコだけの自転車だよ!高いだけ!ジャイアントのエスケイプがコストパフォーマンス最高だよ!」・・・答え①
これが一番多い問①に対する答え①です。しかしその答え①を聞きながら横で私は「うわうわうわ~またきた~」といたたまれない気持ちになっています。なぜならこれも問①と同じ数だけ聞かされた言葉だからです。ネットで検索したらこの種のやりとりを探すのに全く苦労しないでしょう。ルイガノやビアンキを買いたかった人は自分の嗜好を否定されてしまい、悲しくなります。そこに新たな救世主が!
「クロスバイクなんてそもそも街乗りしかできない安物だよ!やっぱりロードはスピード感が違うよ!予算が足りない?大丈夫!アルミでも、カーボンを凌ぐクオリティーのレーサー向けのフレームがあるんだ!それは!キャノンデールのCAAD10だよ!!!」・・・答え②
ここで稲妻に打たれたような衝撃を受け、ネットで得た天啓に従い、キャノンデールを買った人は、「カーボンキラー」という異名を持つCAAD10を所有する喜びに2年浸ったあと、スーパーシックスへと乗り換えるわけです。ミイラ取りがミイラならぬ、カーボンキラーがカーボンになっています。
すべて、あるあるです。ホントはこの先に「信頼できるショップを探せ」⇒「信頼できるショップなどない!」とか「BASSO買っとけど素人!」とかそういう独自進化を遂げる場所もあるわけですが、それはそういう専門のところでお願いします。
間違わないで欲しい。ルイガノとビアンキは、素晴らしいメーカーです。
で、私はルイガノやビアンキを否定したいわけでも、ジャイアントやキャノンデールを馬鹿にしたいわけでも全くない、ということをここに強調しておきます。だってこんなのキリがないんですもん。学歴と同じですよ。どこでもええやん、という話。
ビアンキなんてツール・ド・フランスで走っているメーカーですよ?ダメなわけないです。ビアンキ否定してる人だって、もし同僚から「オルトレをDi2で買いたいんだけど、いいかなぁ?」って聞かれたら、「お・・・おう・・・いい・・・と思います。」としか言えませんよ。
よく、「ビアンキなんて日本の代理店の企画商品。イタリアンみたいな顔してるけど台湾生産だよ」とか、「ルイガノはアパレルブランドが自転車作ってるだけ」みたいなアドヴァイスをする人がいます。コレは当たってるといえば当たってるし、間違ってるといえば間違ってる話です。大きい視点で言えばどうでもいい話。「俺ちょっと知ってるんだぜ」という鼻息のようなものでしかありません。
そもそも、代理店を介してモノを売るのは、本社が日本支社を作って自転車を売る手間と費用を考えれば、ごく当たり前のことです。日本の事情をよく知る代理店が日本で売れそうな自転車を企画して売るのも当たり前のこと。その会社の本社が何をやっていようと目の前の自転車がちゃんとしていれば何も問題はないはずです。最初の質問者の意図も「ビアンキやルイガノのクロスバイクの品質は信頼できるか?」という問いかけのはずです。その答えは、
「ドンキホーテで売ってるような有名自動車メーカーの名前がついてるだけの自転車と比べたら失礼なほど、きちんとしています。ジャイアント、キャノンデール、トレックその他の自転車専門店にあるクロスバイクと比べたらどうかと言われれば、有意な差はないです。好きなものを買いましょう。」
で終わりなんです。シンプルです。細かく言えばそれはもちろんありますが、クロスバイクの使用用途の微妙な差異なんて、赤紫と青紫の違いくらいの微妙なものなので、赤か青か緑かもわからない初心者は色とデザインで選べばいいんです。自転車の動力は人力。ルイガノに乗れば2倍のスピードが出るわけもなく、ジャイアントに乗ってもチネリに乗ってもピナレロに乗っても同じです。そもそも、本物のイタリアンバイクを買おうとしたら、中古の自動車を買えるくらいのお金が飛びますし、それ以下の自転車は90%くらい台湾か中国産です。それはデローザであっても、チネリであっても、コルナゴであっても、ほとんどそうです。で、台湾製がダメなのかといえば、そんなことは全然ありません。台湾は世界一の規模の自転車メーカーがある国ですから、メイドイン台湾こそ品質の証。イタリアの職人が作れば精度が高いというわけでは全くありません。むしろ日本人から見ればイタリア製は適当で不完全な製品に見えるものもある。だから、クロスバイクという「週末に30キロくらい乗れたらいいな」「通勤で軽快に走りたいな」という用途で使う自転車なら、台湾製が最高だ、ということです。そこでチェレステカラーが気に入ってビアンキ、いいではないですか。ルイヴィトンみたいな名前でシンプルなデザインのルイガノ、いいではないですか。品質バッチリ、本人満足。なぜ、他人の幸せを削るようなことをするのか。その理由は「自分がかつてそうだったから」に他なりません。
この道は、いつか来た道
私もそうです。「クロスバイクがほしい」「出せるのは3万・・・頑張っても5万円までだなぁ。」「ビアンキ、オシャレだなぁ」と思って買おうとして、上のようなやりとりをネットやリアルで繰り返し、「レベルアップ」してそう思わなくなったから、いつかの自分に説教しているわけです。やられたことをやりかえしているわけです。しかし、コレは本当に「レベルアップ」なのでしょうか?
私は違うと思うんです。ほとんど99%の人にとって、自転車は移動手段。自転車そのものが趣味、というのは変態のたぐいです。車ならいい車に乗ればモテるかもしれませんが、「俺の自転車、パッソーニだぜ!一緒にサイクリングしないか?」とか言われてついていく女性なんて、かなりレアだと思います。かなりマニアックな自転車屋さんの女性店員くらいじゃないですか?それでも行かないかもしれません。
それに、自転車で速くなるのはそんなに偉いことなのでしょうか?自転車に詳しくなるのはそんなにすごいことなのでしょうか?違うと思います。仕事で営業成績トップ!ボーナス2倍!自転車ママチャリ!⇒コレ、最高です。営業最下位!ボーナス半分!それ全部使ってスカイロン買いました!⇒ダメ人間ですよね。みんな選手じゃないんです。普通の社会人なんです。ただの趣味です。麻雀強いとか、バッティングセンターでホームラン王とかそういうのと一緒です。真面目に働いて、しっかり儲けて、ちょっと貯めたお金で奥さんに怒られない程度の自転車買う人が一番偉いのです!
そうなのです。普通の人は「ちょっとだけ他と違う」自転車を欲しいだけです。ちょっとだけお金を出してなるべくたくさんの人に「あ。いいなぁ。」と思われたいだけです。みんなが欲しがるもの、みんなが同じように持っているものはときに陳腐なものに見えますが、いいものだから陳腐にもなるわけです。(銀英伝でも似たようなこと言ってましたね。)それを否定することは誰もできないと思います。
悩みどころとして、この人が一生自転車趣味にハマらないならクロスバイクで十分、でもあとでハマったときに絶対不満が出る、そのときの拡張性のあるものを・・・という子供の進学先を心配する親心のような心配を勝手にして、本格的なものをつい勧めてしまう人がでてきます。これは一理あるのですが、でも本格的にハマっちゃたら、5万か10万か、といったような問題を遥かに飛び越えたお金が動いてしまうので、よくよく考えれば要らない心配であることに気づきます。
実際、私もある人に「5万のクロスバイクを探していて・・・」と相談され、「クロスよりロードだ!」と説得し、その人をでかいバイクショップに連れて行ったことがあります。せっかく連れて行ったのに本人は「なんだよコイツ、めんどくせぇ」と思っていたそうです。ところがそこで私が、「コレがカンパニョーロというコンポで、ホラ、クランクの形がシマノと違うでしょ?」などと説明すると、その人の脳天に雷が落ち、「なななな!なんと美しい!!!」と本人が完全にドハマりしてしまい、その後、あれよあれよという間にその子は自転車に投資し、世界に一台しかないフレームをオーダーし、私のシマノコンポを馬鹿にするようになるほど自転車にハマるという事件がありました。バカにされるのまでは想定外でしたが、これは言ってみれば幸せな出会いですよね。いいものをいい人に勧めた、ということですから。
ですがこんな変態の一例のために(まさしく、「変態」という言葉の正しい使い方ですね)、他のあらゆる一般人を犠牲にする必要はないです。自分が苦労したからといって、ほかの人に楽をさせてやりたいというのは、少し違う話です。そもそも子供の進路と違って、この場合、相談に乗ってあげてる人は、全然お金を払わないわけです。「5万じゃダメだ!あと10万俺が出すからロード買え!」これなら分かりますよ。でも違うわけです。要は、偉そうに説教ヅラして、他人のお金で擬似お買い物をして、なおかつ趣味の仲間を増やそうとしているわけですよ。こんないやらしい人いないですよ。ハイ、私の話です。すいません。
相談に乗ること、の難しさ
自転車に限らず、人の相談に乗るのは、簡単じゃないなと思います。背伸びする中学生に、「大人になったらタバコもアルバイトもお酒も、全部ちっともありがたくなくなるから、やめとけ」と言っても伝わりません。その子供が大人になったら、説教した先生よりよほど立派になることだって往々にしてあります。「相手の身になって」とか言いますが、そんなもんホントにできたら苦労しないし、そもそも本当に本人になったら、悩んでいる人が二人になるだけなので、何も解決しないのです。相談者は、相談するときに既に結論を出していて、あとは背中を押して欲しいだけ、なんてこともよく言われますが、そうでない場合もあります。人の相談に乗るって、難しいですね・・・って今日長々と書いてそれか、という結論でした。ひどいブログ!