半廃墟の子供天国
大阪にATCという建物があります。
バブル時代、アジア太平洋地域の貿易拠点として、関税なしで活発な取引を・・・というTPPのさきがけのような計画だけ大雑把に決めて、とりあえずWTCと並べて巨大なビルを建てることが決まりました。ところが完成時にはすっかりバブルが弾け、高い賃料とアクセスの悪さ、二重に取られる移動料金など、「これぞお役所仕事」のおかげでテナントは全く埋まらず、「小奇麗な廃墟」という趣きをオープン当初から感じさせていました。中国の「鬼城」をあまり笑えません。
大阪の第3セクターはここを始め失敗の博覧会。WTC&ATC、クリスタ長堀、大阪ドームに、極めつけがフェスティバルゲート。「やる前にわかるやろ?」と誰もが言いたくなるような無謀な計画は、誰の腹も痛まない(ように見えて実はそんなことはない)税金を、「とりあえずあるから使おう」というコンセプトのもとスタートします。そして役所と企業が好き勝手に思惑をぶつけ、まとめることもせず、すべての方向のご機嫌をとった結果、誰も喜ばない、誰も責任をとれないキメラ箱モノに結実します。大阪の3セクで成功したのは海遊館とUSJのみ。USJも大阪離れしてから今のブレイクがありますし、海遊館も今は近鉄の子会社です。
フェスティバルゲートはながく、「大阪のど真ん中にある廃墟」として環状線からも見られるその威容を誇りましたが、今はなくなりました。先日、その現役の廃墟に奥さんが、
「子供の遊ぶところあるみたいやで」
というので、行ってみました。
何年ぶりかのATC。この写真だとなんだか小奇麗ですが、ところどころ傷んで古びてきています。今の建物は、歴史を重ねてただただみすぼらしくなっていきます。大阪市には中央公会堂やその付近の多くの古ビルなど、100年近くたってもランドマークになるような素晴らしい建物があるのに、なぜ好き好んでこんな巨大な廃材を建てるのか。
何より物悲しいのが照明。節電のため暗いビル内にテナントはまばら。大阪市関係や古物商の倉庫件事務所のようなテナント。あとはセレッソのショップ。さびれたアウトレット。ドリームランドやフェスティバルゲートのような本物の廃墟より、現役で稼働してる廃墟のほうがある意味凄みがあります。ピエリ守山までは行かないですが、相当な寂しさです。
そんな現役廃墟のだだっ広い空間に響く、子供の高い笑い声。ホラー?コレ、ホラー?
いえいえ、滅び行く腐海のなかの一筋の光。平日のうらぶれた廃墟に一箇所だけ明るい場所がここ、
あそびマーレ。
合計特殊出生率1.4の日本に、これだけ子供がいるのかというほど平日なのに子供がいっぱい。大型アトラクションなどはないものの、昔デパートの屋上にあって子供を喜ばせていたくらいのライトな遊具が勢ぞろい。
コレ、ぜったいたのしいやつ!娘はこわがってやりませんでしたけど。
やたらと多い、ボール温泉。6つくらいあった気がします。
リアル木馬。ちゃんとギャロップします。
詳しくは施設案内をどうぞ。http://atc-asobimare.jimdo.com/施設案内/
とにかく子供があっちでもこっちでも昆虫のように動き回っています。先ほども言いましたが本当に少子化なのかと疑うくらい。
電車セットやお買い物ごっこのおもちゃ、トランポリン、滑り台など、子供がやりたがるけど、買ったら高いし、何より置き場に困る(←これ重要)なものが勢ぞろい。あとは別料金のゲームセンターによくあるような幼児向けゲーム機もあります。
難点は動線。散々クチコミでも書かれていますが、それぞれのゾーンでいちいち靴を脱ぐ必要があります。ブーツで行ったら最悪です。子供に脱ぎ履きさせるのも大変。コレはここが最初からこの施設を念頭に置いたものではなく、事務所などのテナントが入っていたスペースをブチ抜きでまとめたから廊下をそのまま廊下にし、離れ離れのテナントを繋いだ結果でしょう。これだったら入口で靴を脱いでどこでもいけるようにしてほしいのですが、あれだけ書かれて直さないからには何か不都合があるのか、そもそもここで長くやる気がないので撤退準備でしょうか。いぜれにせよ、ここに遊びにくるときはクロックスやつっかけで十分な気がします。大丈夫です。誰にも見られません。ココ以外は薄暗いし。
とにかく子供はハイテンション。ただし、時代を反映して皆あまり一緒に遊ぶという感じはなく、各々バラバラに楽しんでいます。
ママさんとパパさんはケガしないかだけ確認するだけでも疲れます。でも大丈夫。至るところにマッサージチェアがあって、みなさんそこでウトウトしながら腰掛けて子供を眺めています。動線に気を使わないのに、木下藤吉郎ばりに妙に気が利きます。やっぱ大阪だから?マッサージチェアメーカーの宣伝?
基本的にチープなんだけど、幼稚園児~小学校低学年は大喜び、人ごみもなし。料金は大人900円と、すぐ近くの海遊館(2300円)より激安!何度も入退場できるので、下のアウトレットでママがお買い物してるあいだにパパが一緒に遊ぶこともできます。ご飯もATC内にほそぼそとやってるところがそこそこあります。駐車料金1日最大800円がちょっとネックかなと思いますが、3000円以上つかうと1時間ぶん400円が無料になるようです。ただし、子供がここに入るとたっぷり3時間は出てこないと思いますので800円必ずかかるとして-400円でちょうど400円。まぁ、許容範囲かな。電車で来ると今度は逆に電車代かかりますしねぇ。
単独でも無駄金をどんどん放出してきた大阪市と大阪府。二重行政で無駄スパイラルの歴史を歩んできました。橋下改革でWTCへの府庁舎の部分移転なども行っていますが、ちょうどこのあそびマーレと同様に、有効活用と言えば聞こえはいいですが、本腰入れて百年ここでやれるような感じはゼロでしょう。大阪市大と大阪府大の合併もどのような形になるものか。同じ大学内で何度も靴を脱ぎ履きするようなことにならなければよいのですが。どうでもいいですけど、大阪市長選、まるで橋下さんが当選したような報道ばっかりですけど、みんな、「吉村さん」が通ったんだって、知ってますか?
話をあそびマーレに戻しますと、大阪に住んでおられる方なら、コレは穴場かと思われます。近くに海遊館やIKEAもあります。お子さんはあそびマーレだけでも丸一日つぶせるかと思います。ママだけでIKEAに移動とか、いいんじゃないでしょうか。USJほど頑張りたくない家族サービスに、ちょうどいい。一生の思い出は全然できないし、野山で駆け回るような緊張感もない、ポリエステルの香りのする安全な遊び場は、知能も運動能力も育てないとは思いますが、やっつけ家族サービスに最適。
家族サービス界のツーベースヒット(1打点)、あそびマーレ、まぁ、いいんじゃないでしょうか。
あ、勉強になる点もありました。「地方議員とか首長とか適当に選んでると、こういうことになるよ」という社会の勉強にはなります。これ大事!