慈眼寺 副住職ブログ

2016 センター倫理 概観

いやー細かいこと聞いてきましたね。
「倫理で点を稼ぐ」という狙いがあった人は、相当苦しかったのではないでしょうか。
8割取るのは容易ですが、9割、満点となると、相当に厳しい「満点潰し」が数問あって、「そりゃねぇよ」と思わなくもない問題でした。

全体的にただ単語を覚えているだけではダメで、思想の内容にまでかなり立ち入った作問が多かったです。

第一問の青年期・現代の社会問題に関しては、相当簡単でしたが、一問だけまさかのハンス・ヨナスでバランスをとる形。しかもハンス・ヨナスが分からないと解けない構造ですので、ほとんどの受験生にとっては50%の賭けになってきます。
第二問の源流思想も概ね普通の問題ながら、結構立ち入った内容まで聞いてきます。「無自性」なんて単語まで出てきます。
第三問には難問が2つ。「スサノオ」の行為まで立ち入った問題と「金光明経」。ここに尽きます。ここはどちらか合えばよしとしたいような難問。ここを聞いてくるのは予想できませんでした。とは言え他の問題は簡単なので、落とせないでしょう。
第四問の西洋近代思想に関してはまさに正統派と言いますか、真正面から聞いてくる内容で、難易度もちょうどよい良問。ちょっと「アルベルティ」にビビってしまっては出題者の思うツボなので、ここは冷静に。

以前は、国語ができれば倫理なんか余裕、と言われた時代もありましたが、最近は難化が常態化しています。過去問や予想問題が蓄積するにつれてさらにそれをかいくぐる問題を出題側も作らざるを得ないので仕方ないですが、ここ最近の傾向を少し変えて、細かいところを聞いていました。過去問を機械的に解いているだけでは、9割はなかなか難しいかもしれません。

しかし全体として、ただただマニアックな知識を問うだけの満点潰しは2、3問ですので、そこを全部落としてもギリギリ9割は乗せられるようにはなっています。あとは正統派の思想の内容理解と、ただ単語を覚えるのではなく、興味を持って実際に著書を読むまではいかなくても、資料集を暇さえあれば読むような、本当にこの科目が好きになることを求めるような問題があって、良い問題だったと思います。しかもその傾向ばかりではなく、オーソドックスすぎるくらいの問題がベースですので、バランス型だと言えます。

もし、昨日の時点で「傾向が変わった!」と嘆いていたら、「勉強が足りないだけだよ」ということになります。

「倫理政経」の倫理分野に関しては、上の満点潰しの難問がほぼ全て出題されていないため、ここに関しては9割は十分狙えるし、狙っていきたいですね。50点満点とることも十分可能な出題だったように思います。

なんて、受験生じゃないからこんなこと言えるんですけど、受験生はみんな「今年しかない」わけで、他の科目の勉強もある中、大変だったと思います。気分を切り替えて、私立や二次試験に臨んでほしいです。