慈眼寺 副住職ブログ

自転車で見る”ミナミ”

少し前に、用事で大阪の船場に行かなければならないことがありました。
ついでなので、久しぶりにミナミの街を歩いてみようと思いましたが、街はどこも外国からの観光客でごった返しています。
じゃあ、学生時代に「オシャレスポット」だった船場~堀江あたりを歩いてみるか、と帰り道、地下鉄を使わずに歩いてみました。

もう10年以上まえくらいでしょうか。
堀江がめちゃくちゃ「オシャレ」と言われた時期がありました。
アメ村の賃料が高く、新規参入のアパレル関係者が外側へと拡大していき、ファッションの傾向もアメ村と様々な形で差別化をはかりました。
もとはと言えば仏壇屋、家具屋の通りだった静かな町に、「オシャレ」なカフェがどんどんでき、セレクトショップが乱立しはじめました。

「堀江が今アツい」

と若い人たちが注目し、多くのブランドが路面店をオープンしました。堀江に店を出すことが大阪での一つのステイタスであるような時代があったような気がします。週末には若いカップルが集まり、それぞれのとんがったファッションで街を歩き、ファッション雑誌のスナップ撮影が行われました。

「百貨店はつまらない」

百貨店のアンチテーゼとして、路面店が一瞬輝いた時期でした。
堀江でパンを買う、堀江のサロンで髪を切る。若者がちょっと得意げにそう語った2000年台前半でした。

風向きが変わり始めたのがなんばパークスの相次ぐ増床。駅前すぐの商業施設に同じブランドがあるのに、わざわざあんなJRなんば方面に歩いていく理由がなくなりはじめます。完全に流れが変わったのがキタでの異常とも言える新規商業施設のオープンと各百貨店の増床合戦。阪急・阪神・大丸、イーマ、ハービス、ハービスエント、ディアモール、HEPナビオ、NU茶屋町、ブリーゼブリーゼ、阪急メンズ、ルクア、ルクアイーレ・・・etc。最後のグランフロント大阪の開業は完全にミナミにトドメを刺しました。人の流れが一気に変わり、同じキタでも凄まじい生存競争があるなか、ミナミは「南北戦争」に完全に敗退しました。

そもそも、ブランドもののファッションで人と差別化を行う、という文化自体が、団塊ジュニアまでの昭和価値観。ファストファッションが主流となった今、「人と違うこと」を右へ倣えで追い求めるという空しい「個性」の追求自体に対する冷めた意識が日本に蔓延しています。つまりは一番オシャレをする時期の若者の人数がそもそも少なく、その少ない若者がファッションにお金をかけない世の中です。

そんな堀江が今、どうなっているのか。

私が目にしたのは、想像以上に閑散とした町でした。
若いころ目にした店はほとんどなくなっており、飲食店と雑貨店だけはやれている状態。空き店舗のテナントも見つかっていない閑散としたビルもありました。ただ、逆に堀江公園にはたくさんの子供連れのお母さんが集まっており、子供さんを遊ばせています。どうやら買い物ではなく、このへんに住んでおられる様子。大きなタワーマンションがたくさんできましたので、堀江は今や「遊ぶ街」から「住む街」に変わったように思います。

そう考えると「閑散とした」という表現は誤りで、「落ち着いた」町になったのかもしれません。そういえば、アパレル関係で生き残っているのがNORTHFACEなどのアウトドアブランドでした。パパが服を買うなんてもうアウトドアくらいですもんね。やはり「暮らす町」になったのか、それとも今売れる服がアウトドアだけなのか。

それ以上に私が個人的に目についたのは自転車です。自転車大好きな私ですので、停まっている自転車や、走っている自転車には素早く目がいきます。町やお店以上に、自転車の様子が変わっていたのが印象的でした。奈良はもちろん、大阪のキタでもあまり見られない、ここミナミに特徴的なように見えました。ちょっと写真を撮ってきました。

ミナミ

ミナミ2

ミナミ3 

ミナミ7

ミナミ8

ああ、大阪だなって感じしますよね。

特にこの電柱にロックしてる感じとか。

でも、やたらと目にする同じ自転車があることに気づきます。
パッと見「エアロロード?」と思ってよくよく見ると、ブレーキや変速レバーがない。

ピスト?

そうなんです。ピストなんですね。よく見るとピストがいっぱいあるんです。
これは奈良ではありえない光景。
そしてもっと言うと真っ黒で「LEADER」と書いた一見エアロっぽい、ホイールのリムハイトも結構男前なのが異常に多いことに気づきます。
え?なんで?なんでこんなに?・・・と思っていたら、堀江のオレンジロードのど真ん中にありました。

ミナミ4

ミナミ5

ミナミ6

ここで売ってるものがこの一帯に駐輪されてるんですねぇ。
ビックリです。
堀江に来ること自体が下手したら10年以上ぶりなので、この「brotures」というお店の売れっぷりにはちょっとカルチャーショック。
ピストには全然詳しくないので、「そういえば自転車雑誌の裏表紙とかに宣伝あったな・・・」くらいの印象しかなかったのですが、この人気はとんでもないですね。

ちなみに自転車に詳しくない人には同じに見えるかと思いますが、ピストというのは簡単に言うと、ペダルを漕がずに惰性で走ることのできない自転車と言いますか、変速などに頼らず、踏んだら踏んだ力の分だけ、本当にちょうどその分だけ走る自転車と言いましょうか。もっと言えばブレーキが標準装備ではない自転車ということになります。ペダルを逆回転させることで止まります。たぶん。よく知らないので。チュートリアルの福田さんが逮捕されて、ピストは絶滅したと勝手に思い込んでいましたが、とんでもない!めちゃくちゃ流行ってるんですね。ビックリしました。

知らないもののことをとやかく言うのは嫌いなので、ピスト自体のことはどうこう言いません。
危ないといえばロードだって危ないですし、その人次第だと思います。

単純に、「奈良では坂が多いし、考えられないなぁ」と思うだけですね。それと、たぶん若い人が乗ってると思うんですけど、こういうのに乗りたがる気持ちも、分からなくはないんですね。

ロードバイクには、決まりごとが多すぎるじゃないですか。

毎月のお小遣いから貯金して5万くらいでいいかなって、パパさんが自転車屋さんに行って、「ロードがほしい」って言ったら、どうなるか。
気難しい自転車屋のオヤジに「そんなお金じゃ無理だよ!」と追い返されるのがオチです。

それならばとネットで「勉強」して、15万持って気分悪かったから別の店に行き、あこがれのキャノンデール下さい!と言ったら、どうなるか。
さっきまでニコニコしていたオヤジが「ウチは扱ってないね。っていうか、アメリカの自転車はちょっとねぇ。やっぱりイタリアだよ!」

ナヌー、イタリアなのか!と勉強して、ハートのマークが可愛いデローザ下さい!105で!
⇒「デローザはカンパニューロだろ!」

もうやだ。お勉強が多すぎる!

他にもあの変態にしか見えないぱっつんぱっつんのジャージにキノコヘルメット!トンボみたいなギラギラサングラス。すね毛は剃れ?手信号?車道左側?パンクくらい直せよって?ケイデンス?ナニソレ?LSD?ナニソレ麻薬???店の常連のおっさんはうっとうしいし。ああ・・・クロスバイクに抜かれた・・・。もうやだ・・・こんな自転車・・・

絶対にモテない!

もう徒弟制度のギルドなのか?というほど決まりが多くて、なおかつ、その決まりを全てクリアした先がモテないおっさんという無間地獄。
その地獄を前にして立ちすくむオシャレ感度の高いイケメン青年が、そういう面倒さをすべて取っ払った上に、シンプルで故障が少なく、値段が安くて、ストリートカルチャーともかかわってCOOL!な自転車があるYO!と言われたら、そら猫まっしぐらですわ。分かりますわ。私はもう地獄に耳まで使ってるのでええですけど。

まぁこの近所に住んでらっしゃると思いますし、遠くても鶴橋とか阿波座とか、そのへんまで帰るだけだと思いますんで、玉造のほうとか行かなければまず困りませんし。見たところ補助ブレーキをガッツリつけてる人もいました。安全にだけ気を付けてくれたらOKです。

なのでピストの是非とかそういうのはノーコメントで。一つ感じたのは、昔はこんなに自転車がなかった。つまりピストでしゃーっと走れるほどに、このへんは人がまばらなのだな、ということ。昔だと考えられませんし。

まぁそれにしてもbroturesさんのLEADSRというメーカーのバイクの多さは本当にビックリでした。これほどまでに同一メーカーの同一カラーの同一車種が同一地域に集まっているのはちょっとビックリでした。もしかして宣伝用に貸してるのかしら。

だからナニが見えたのだと言われると困りますが、結局今回も自転車ばかり見ていた副住職でした。なんだこのブログ。