慈眼寺 副住職ブログ

嬉しかったこと

先日クラブで指導していると、別のクラブを指導してらっしゃる先生が話しかけてこられました。
よもやま話をしていますと、何かの話の流れで、その先生が

「私、バドミントン部、大好きなんですよ」

と言ってくれました。

「先生がいてないときも、彼らは真面目に練習してる。空き時間もずっと外を走ってる。推薦で入ってきた子もいないけど、勉強も真面目にやって、クラブも少ない練習時間で頑張って、本当によくやってる。ああいう子たちが育つクラブが、もっと増えたらいい。これが理想のクラブですよ。」

褒め殺しですか、という内容ですが、言ってくれた先生が、毎年インターハイに出場しているクラブの先生なので、とても嬉しい。涙が出るほどうれしい。

この学校はクラブが強い学校で、推薦入試で入ってきたスポーツエリートもいっぱいいるクラブがあります。でも、今のバド部はそうではない。私がきたときには人数もギリギリで、初心者ばかりのクラブになりかけていました。

でも私にとってはそれがちょうどよくて、そんなエリートは教えられないし、入ってくれた初心者をじっくり面倒を見て、勉強と両立させながら、まともな社会人になってくれるような選手を育てようと思いました。目指したのは公立のクラブ。ここは私立だし、私も高校は私立なんで、変な話ですけど、公立のクラブを目指しました。予算もなくて、選手も取ってこれないけど、生徒が一生懸命頑張って、勝てなくても基本はしっかりできているようなクラブ。それだけを目指して10年やってきました。結局、教えるのが私なので、そんな強豪校にはなれませんでしたけれど、自分のできること、自分のやりたいことをブレずに10年やり続けて、報われた気がします。

僕は運動神経も本当に悪くて、結構文化系気質と言いますか、本ばっかり読んでいた高校生だったんですが、なぜかこの職場では他の部のおじいさんの先生に、「君はこの体育館で一番元気がいいね!」と褒められたり、他の部活の顧問の先生にも可愛がっていただき、教員としてはここを離れてからも幸せなコーチ(笑)生活を送れました。今でも学校に入るたびにみなさんが明るく声をかけてくれて、本当にありがたいです。

でもそんなことよりも、生徒が褒められるのが一番うれしい。

強い弱いとかは、それはもう個人の能力なので、強い子は最初から強い。そこを諦めたらダメなんですけど、やっぱり、モノが違う子、っていうのはいるわけで。それに、どんな子でもすごく強くする魔法使いのような指導者にも、自分はなれないなと思っていて。だから、とにかく楽しくクラブに来てもらえること、そして、ひょっとしたら他の部だったらコイツは埋もれているかもな、という「もったいない子」を、ちょっとでも勝てるように、上手くなるように。

それ以上に、自分の生活を自分でちゃんとコントロールできる人間に。スポーツができるだけでは、社会に出ても食っていけないですから。いろんな場所で、楽しく、きっちり、メリハリをつけて自分の能力を出していける人間に。

そういうことを考えて、ずっとやってきました。だからこの先生の言葉はとても嬉しかったです。

私の指導がいいわけじゃなく、本当にいい子たちが入ってくれるので、その子たちがコートの中でも外でも、あんまり嫌な思いをしないで済むように、ただそれだけを考えて、あとは自分が楽しいことだけを全力でやってきました。本当に全力で。弱いので全力出すしかないので。

すごい指導者の先生に、そういうことを全部、自分の中のおぼろげな理想みたいなことまで汲み取って頂いて、生徒たちを褒めてもらえて、本当にうれしい日でした。

この他にも、バドミントンショップ経由や保護者経由で、生徒が「クラブめっちゃ楽しい」って言ってくれているとか、耳にすることがあります。

いい話って、なかなか耳に入ってこないんですけど(笑)、でも、じっくりじっくり、遠回りして、忘れたころに、ちゃんとやってくるんです。ホント。ホントゆっくりやってくるんですけど。

別に給料を上げるとか、休みが増えるとか、そういうことじゃなく、人間って、こういうことのために働いているんだよなって、いつも思います。