5分でわかるチームスカイ
正直、フランスもどこも、それどころじゃないかもしれませんが、こんなときこそ、のんきな話題を。
今年のツールドフランス、面白いですねぇ~。
ここ数年、「チームスカイ」という、「アンタら、反則やで」というくらい強いチームがずっと勝ってて、「強すぎて面白くない」とか言われてるんですが、スカイが強いまま、今年は面白いです。
チームスカイについて全く知らない仏教徒の皆様に簡単に説明します。まぁとにかく強くて、わりと非科学的な根性論みたいなものが根強かった自転車界に、科学的トレーニングや風洞実験やらを導入したチームです。イタリアやスペインのチームが「あいつら、勉強したら強くなるつもりだぜ」って笑ってたら、全然かなわなくなって、みんな今やスカイを真似してるけど、真似しきれてない感じ。
ここ数年の絶対的エースはクリス・フルーム。
国籍は一応英国にはなるんですが、生まれはケニア、育ちは南アフリカ。とんでもなく長い手足をぎゅんぎゅん振り回しながら、下ばっかり見て自転車をこぐので、なんかちょっと異様な感じがする選手ではあります。もともとはスカイのエースではなく、アシストといって、エースのために身を粉にして働く裏方だったんです。
当時のエースはウィギンス。顔がいかにもなUK風味のモッズ系。ビートルズの中にいてもなんら違和感がないです。これぞイングランドじゃ!という感じで母国で大人気でした。
見てください、このモミアゲ。イングランドの成分って、ほぼモミアゲですよね。
ちなみにこの黄色いジャージはツールドフランスの総合一位の印。つまり、世界一自転車が速い人の証明です。
絶頂期にあったウィギンスですが、すでにこのとき、フルームにちょっとした事件を起こされています。
「ウィギンス、早よ来いや」事件です。
この日は、フルームの登りのスピードを生かしてウィギンスが2位以下を引き離すチーム戦術でした。フルームがバテるまで全力で坂を引っ張って、フルームがバテたら元気なウィギンスがさらにスピードを出してぶっちぎるシナリオ。ところが、当のウィギンスが先にバテてしまい、フルームがイライラするシーン。「ホンマは俺の方が速いのに」という不満がアリアリとでていました。
こうして違いを見せつけたフルームは翌年からエースの座を射止め、ウィギンスはトラック競技の方にまわります。イギリス人初のツール制覇の英雄で、ナイトの称号をもらい、「Sir」づけで呼ばれるウィギンスをあっという間に実力で追いやった本物の自転車モンスター。それがフルームです。
ただ、強すぎて全然面白くないのであまり人気がなく、私もあまり好きではなかったのですが、今年は違いました。
まずは第8ステージで山頂からの下りでとんでもないことをしでかします。
この「なんのためにサドルがあるんですか?」と聞きたくなる姿勢は、ペダルが回りきってしまうような高速で下っている際に、体重を思いっきりかけ、空気抵抗を減らす下りのテクニックです。(私は怖くてできません。)これ自体は、サガンをはじめ、やる選手はよくいるのですが、このときはなんと、このままペダルをこぎました。
ビックリしました。この姿勢でこぐ人は初めて見ました。フルーム自身は、このやり方をチームメートから学んだそうですが、まずそもそも、たいてい優勝候補は安全に安全に、アシストをこき使って、滅多に本気を出さずに安全運転が基本です。それなのにツールドフランスの優勝経験者で、今回も大本命のこの人が、カーブの多い下り坂で、90㎞/h超のスピードを出して、こんなリスクを冒すことにビックリしました。結果、フルームはものの数キロでライバルたちに数十秒の差をつけ、総合一位の黄色いジャージを手にします。
ゴールした時にはこのガッツポーズ。
これほどの選手が必死で峠を下って大喜びです。これにはちょっと感動。
しかしこんなフルームにピンチが!
第12ステージでは、観客が調子に乗り過ぎて道をふさぎ、先導するバイクが急停車して選手たちが衝突。フルームをはじめ、数人が落車しますが、ほかの人の自転車は無事ですぐに走り出します。しかしフルームのバイクは壊れた。
どうする?チームカーを待つ?
あと少しなので、走りました。
あのフルームが、ツールドフランスで、黄色いジャージを来て、マラソンです。
もちろん、しばらくあとでチームカーが来て自転車に乗れましたし、救済措置でフルームの遅れはなかったことになりましたが、あれだけの選手が一位にいながら必死すぎる姿は衝撃でした。
こういう、実績も実力もある人物が必死な姿を見せてくれると、「結局、勝ってる奴って、努力してるんや・・・」「勝ちたい気持ちが一番強い奴が勝つんや・・・」という真理を目の当たりにさせてくれて、本当に感動です。一気にフルームが好きになりました。
※詳しくはこの動画をどうぞ。
そんなわけで、予備知識は十分!今年の攻めまくってるフルームの姿を是非見てください。