天川伝説パンク事件(後編)
川上村到着までは順調そのもの。
その後、「上北山村」方向へ、道路標識に沿って走ります。上北山村役場までは34km。普段の感覚ではどうってことない距離です。ちょっと足を伸ばす程度。
すこし走ると、一気に別世界が待っていました。
とにかく絶景。
「紅葉と深緑は近畿一の絶景」と言われるのも納得。色々な山中を自転車で走りましたが、ダントツに最高です。
とにかく、とにかく水が綺麗。どうなってんのコレ。
天国ですか?
この日奈良市内は38度とも言われる猛暑日でしたが、ここは別世界。ずっと木陰なので、全然暑くないです。避暑地として最高です。飛び込みたいなぁ!ココ!
ものすごい山中にも関わらず、釣り人がたくさんおられて、案外車通りが多い309号。正直言って路面は最悪です。車一台がやっとの道幅にRV車などがガンガン走るのか、アスファルトはボッコボコ。おまけに先週の大雨の影響か路面が濡れており、落下物も多い。当然落石も当たり前のようにあります。路面に最新の注意を払わねばならない、にも関わらず、木陰で暗い。路面に相当注意しなければならないのに、景色は絶景のオンパレード。これは危険です。
ここにきて、副住職あることに気づきます。
「当然自販機とかないよな・・・」
そらそうです。分かり切ってたことです。
とはいえ、緩やかながら登りが続き、水も思ったより飲んでしまいます。どうしようかな。なんか飲みたいな。そろそろ帰ろうかな・・・。ん?待てよ。
コレやで。
こんな綺麗な水がすぐそばにあるんやで。なんで俺はいろは〇だか南アル〇ス天然水だか知らんけど、ペットボトルにご丁寧に詰めたただの水を探してるんや。滑稽やないか。コレ、飲んだらええやん。最高やん。下りられそうなところあったら、下りて汲んだらええやん。
そう思って探していると、すぐ横に小さい滝が!!!
これやがな!
最高かよ。
万一、万一やで。ないと思うけど。仮にちょっと水質に問題あったりして飲用に適してなかったりしても、コレでお腹壊すんやったら、わし、壊すわ。トイレいくわ。なんぼでも。
そう思って山から流れる小さい滝から直にくみ取った水を飲み干すと・・・。
うまい!うまい!コレ!うまいで!
めっちゃおいしいやん!なんで俺今までいろ〇すなんか飲んでたんや!しょうもないやっちゃで!
天然ミネラルウォーターで大峰山系のパワーを頂いた私は、俄然元気が出まして、山道をそのままガンガン登ります。なぜか登るほど車が増えます。あとで分かったのですが、登山道の入り口が近いんですね。
とんでもない斜度はないものの、ひたすら続く酷道の登り。さすがの私もだんだんしんどくなってきました。上北山村への道のりのど真ん中にあるという「行者還トンネル」というとこまで、とりあえず行こうとなんとか踏ん張ります。時間もそろそろ、余裕をもって帰るためにはもう帰ってもいいかなという時間。行くか、帰るか、悩みながら進んでいた、そのとき!
えっ・・・。コレ!?
こわいこわいこわい。なんなん。ちょっと今までのと違う!近代感がないッ!
ちょっと政治犯が強制労働で掘らされたようなッ!金を目当てに一山当てに荒くれ者が集まったようなッ!コレ、看板が「美馬作近代医学研究所」って書かれてても違和感ないですよ。トンネル、というより、「隧道」または「坑道!?」
しかもすごい斜面の先にあるし!中死ぬほど真っ暗やし!道幅狭いし!怖ッ!怖ッ!なんで天川伝説殺人事件、このトンネルをネタにトリックやらんかったんや!めちゃくちゃそそるやんけ!やっぱり金田一になれなかったのは理由があるなぁ!
そもそもこの行者還トンネル。あの有名な修験道の創始者、役行者がこの峠に差し掛かり、「険しすぎて一旦還った」という伝説からつけられた名前だそう。好き好んで山に登って命がけの修業をする物好きな宗教を始めた人が、「険しすぎッ!」って一旦還るって、ものすごい伝説やないか!天河伝説吹っ飛ぶやんか!
このトンネルを見るまではまたわずかに、ギリギリにかけて大台ケ原に行こう、と思ってた気持ちが、木っ端みじんに吹き飛びました。ただでさえトンネル嫌いなので、即座に還ります。「慈眼寺副住職還トンネル」です。
下り道で、自分の迂闊さを痛感。
この酷道。下りの方がヤバい。当たり前やん。こんだけ荒れて、割れて、落石だらけの細い道を下るって。カーブ曲がったらすぐに車が来るかもしれないのに。
ものすごいストレスを感じながら、路面からのものすごい突き上げを断続的に感じます。
「あ!コレはいった!ぜったいパンク!」
という感じを何度も味わいました。
が、確認すると、異常なし。
「今日の俺はツイてる!」
と胸をなでおろし、なんとか林道を越え、ようやくあの疑似ローソンに近づいたとき!
きました。パンクの神。
前輪がやられました。
「落ち着け。落ち着け。」
落ち着いて、パンク修理。あ!CO2ボンベも予備チューブもいっこしかない!あとは手押しポンプのみ!なんでこんなときに!副住職のバカ!
そんなわけでボンベはとりあえず使わず、手押しでごまかして、どこか道の駅かなんかで空気入れ借りようと判断。さんざん童仙房で苦労した甲斐あって、さっさと直して復帰。さぁ!いくぞ!と足を踏み出した途端・・・
プシュー!
え?後輪?
前後輪すでにやられてた?あとから効くタイプの秘孔?
どうやら満身創痍だった模様。ゴメン。ゴメンね。ガンバスター。
予備チューブももうないので、パッチで補修。またも手押しで空気を充填して、再出発。うむ。なんとかいける。
こうして、なんとか黒滝村の道の駅まで帰還。ネットで調べるとここには空気入れアリ!世の中サイクリストに優しくなったなぁ!
おばさんに頼むと、蜘蛛の巣の張った空気入れを渡してくれました。よーし、空気入れるぞ・・・って。アレ?
英式、米式対応?
いやいやいや・・・。ママチャリでここ来ないでしょうよ・・・。くるならほぼ仏式でしょうよ・・・。トホホ・・・。
黒滝での空気充填を諦め、だましだまし走り、その後も満身創痍の後輪が3度ほど別々の穴を空けてそのたびにパッチで補修し・・・。
大淀のトンネルに向かうときに、ふと、目についたものが!
AIR FREE!
Do you need a pump?
YES!高須クリニック!
そりゃ、空気はタダやけども、この空気入れの絵はリアル!「わかってるやつ」が書いた感アリアリ!
おもむろに自転車をとめて、店内に入るとすぐのところに!コレ!ちゃんとしたやつ!目盛りも上にあって見やすいやつ!ウチのよりいいわ!
でまず「空気入れ、借りられます?」と聞くと、快く貸していただけました。ああよかった。
安心してからアイスコーヒーとソフトクリームを頂いてようやく人心地が。
お見せはココ。「葛カフェ-KAMEKUDO-」さん。
http://par-ple.jp/gourmet/20180421_kuzucafe-kamekudo/
実はこの空気入れを借りた人は初めてらしく、記念すべき第一空気入れ使用者になれました!サイクリストにもどんどん来てほしいとのことですので、ちゃんとした空気入れのある「葛カフェ-KAMEKUDO-」さんにみんなゴーやで!
こうして心から安心して再出発するも、直後にまたパンク再発。今度は焦って補修したパッチがイマイチだった模様。他にも309号でやられた他の箇所もバンバン傷口を開き、汗だくになりながら炎天下でパンク補修をこの後も何度も行うことに。最初にチューブ交換した前輪は無傷だったのですが、今まで何度も補修してきたチューブが今回の309号で限界が一気にきました。
あんな険しいところに予備チューブ一個、ボンベ一個で、古いチューブのまま行くのが無謀。
途中までご機嫌でしたが、結果、前輪1回、後輪4回補修しつつ、だましだましでなんとかかんとか5時に帰宅。
たしかにみたらい渓谷は魅力的で、一瞬「169号より断然309号がおススメ!」と思いましたが、所要時間と路面状況を考えると、やはり169号かなぁ・・・。まぁ、とりあえず大台ケ原の帰りに309号で帰るというのだけはやめた方がいい気がします。309号はどちらかというとグラベルロード向きですねぇ・・・。
ただ、みたらい渓谷のすばらしさはガチ。余裕があれば、洞川温泉に泊まって、みたらい渓谷で遊んで、積み込んだ自転車で大台ケ原でTTというのが一番贅沢な遊び方かなぁ。そんな余裕、なさそうだけど。