奈良はやればできる町(YDM)㉓ ~高畑 ツヅル (tsuzuru)
先日、とある人と話していたとき、「いま、奈良で一番オシャレな空間といえば、あそこでしょうね」という言葉が出ました。
コレはすごい発言。奈良にはオシャレカフェが増殖してる中で、なかなかの!しかもカフェ限定ちゃいますからね。「空間」ですから!
ただ、その人がかなりオシャレな人ですので、これは信じる価値あり。そして場所を聞いてビックリ。毎月お参りいってるあたり。「え?そんなとこにあったっけ???」これは俄然興味が出てきました。
問題は「そんなオシャレな空間に、自転車で行っていいものか。ぱっつんぱっつんのジャージで行っていいのか」という大問題。
教えてくれた方は「開き直ればいいんじゃない?」と言ってくれたので、とりあえず大人しめなジャージに、ビブの上に短パンを履いて誤魔化して行ってみました!
高畑 〝tsuzuru”さんであります!
簡単に言えばおそばの吟松さんのちょい先。吟松さんは子供の頃から何度かお邪魔しているのに、そんなとこあったかなぁ~?
・・・と、アレか?アレなのか?
確かに白いオシャレな建物がポツンとあります。
ただ。
お店・・・なの??
看板もなく、本当に白い家があるだけ。個人の家じゃないのか?と恐る恐る中を覗くと、どうやらお店っぽい。事前のリサーチでは、
「写真撮影はテーブルの上のみ」
とありますので、外観も撮影自粛しておきました。詳しくは「奈良 tsuzuru」とかで検索されますと、まだ許可されていたとき?に撮影されたとおぼしき写真が載っている個人のブログがいくつかでてきます。他にも「子連れご遠慮ください」などのルールあり。
とりあえず自転車はどこに置けばいいか聞くと、いくつか候補をあげて頂いたのですが、スタンドもないことだし、お店の前の溝のなかに突っ込みました(笑)
さていよいよ中へ!
うむむ!
確かにオシャレ!写真で見せたいけど見せられないッ。しかしここはいつも無意味に長文な当ブログの腕の見せ所。よそのやらないことにチャレンジ!写真一枚で分かることを長々と書きまっせ!
一言で言うと、
修道院っぽい。
極限までモノを減らした白を基調とした空間に、合計でも6人ぶんのテーブル。焼き菓子などが入ったショーケース。あとはいくつかの小さい小物が2,3。「よくぞここまで思い切ったッ!」と感嘆するほどモノがない。一種の緊張感すらあります。だいたいしょうもないお店がオシャレ感を出そうとすると、洋書の外側だけ真似たニセモノ本とか意味不明なモノを並べたがります。アレは、弁護士センセイのインタビューのバックにある六法全書と一緒。コケ脅し!
そうそう。こんなのこんなの。(https://item.rakuten.co.jp/pease/10002886/)
翻ってコチラ。先ほどは修道院のようだと言いましたが、この緊張感は茶室に入り込んだ感覚にも似ています。何もない場で茶人と対峙するような感覚。とはいえ、既に入ってらしたお客さんはみなさん談笑されていますので、緊張感でピリピリしているわけではありません。
修道院っぽいと私に感じさせたのは、むしろその中にいるお店の方たちでしょうか。白いニットを着たすらっとした男性と、黒っぽい服を着た女性。どこか神父とシスターを思わせる動作です。と、いっても別にクリスチャンでも何でもないので、修道院っぽいとかシスターっぽいとかアテにならないですが。とりあえず「すき家のカウンターにぜったいいない系」とだけ言っておきましょう!
さっそく「何にしようかな~」とメニューを見ようとするも、ない。
メニューまでない!
先ほどの男性が来られて説明して頂けました。
メニューは一種類ッ!
お菓子二皿とコーヒー。コーヒーも種類を聞かれるのかと思いきや、「コーヒーか紅茶どちらになさいますか?」の一言。
ものすごいシンプル!
そんなわけでその一種類のセットを頼みます。
ね?ちょっと修道院っぽくないですか?仮面ライダーアマゾンズのこの前の劇場版で出てきてもおかしくないくらい。
ここまでシンプルにできます?コレはスゴイ。息詰まるほどオシャレ。ナイフがまた実にいい。
ガサツなことを言うと、量的には高校生の男子とか失神しそうなほどにシンプルです。私は高校時代、お弁当は10時に食べてお昼は焼きそばUFO大盛り食べてましたから。
そんなことはさて置き、いよいよ実食!
おおおお!
この手のケーキ、だいたい食べる前に想像つくんですよ。味。
はじめの説明で「オレンジ風味」と聞いていたので、ああ、ケーキに砂糖コーティングで、そこがオレンジ風味だったり、中にオレンジ風味だったりでしょ?
なーんて、思ってたんです。
言葉で言えばその通りでした。
しかしその感覚は予想をかなり超えていました。
オレンジが強い。
ものすごく爽やか。弾けるようにオレンジの香りがします。コレはちょっとビックリしました。おいしい。確かにおいしい。
極限まで切り詰めた空間の中で、ケーキの生地の甘みと、オレンジの芳香。ものすごいシンプル。しかしものすごくハッキリとそれを感じられます。ちょっとこれは食べたことのない感覚。
人生最後の食事のように、ケーキを少しずつ味わい、コーヒーを飲みます。
コーヒーはクセのない、苦みも少ない、素直なコーヒーでした。お菓子が主役って感じがします。
しばらくすると、二皿目。(そして最後の一皿)
ここまでもシンプルでしたが、二皿目も強烈。
何も知らずに店に入ってこの皿が来たら、「僕、糖尿病じゃないですよ!」と叫びたくなるかもしれません。
ほんとうにガサツなことを言いますと、おかあちゃんが「オヤツやで!」と言ってコレを出したら、
「おかん、なんか怒ってんの?」
と青くなってしまいますね。
寄って見てみましょう。
うーむ、スゴイ。
先ほどの女性が、色々と「動物性の脂は使わずにつくったオーガニックの・・・」とか色々説明してくださいました。
一つ一つが素材の味がしっかり出ていて、一口一口、大事に味わいたくなる焼き菓子。実はゴボウがそんなに好きじゃないのですが、ゴボウ味の焼き菓子も、ゴボウのいいところだけ出ていて、嫌じゃなかったですね。
量的にはあっという間に食べてしまうので、さてそろそろ出るか、と思っていると、先ほどの女性が声をかけてくださいました。やはり見るからに自転車だったようなので、どこから来たんですか、いや、家はこのへんですみたいな。
恐る恐る「あの~こんなカッコできちゃってスイマセン・・・」とオシャレ空間に不似合いなカッコできたことを詫びたのですが、
「いえ全然!よく来られますよ。自転車の人。」
ええっ!嘘やん。いくらカレーが食べられなくなったっていっても、ここに流れてくるの!?
「なんか、この奥の春日山原生林とか行かれるみたいで・・・あの、もっとスゴイ格好でも来られますし。」
え?それってぱっつんぱっつんの?
「はい…。まぁ、ぱっつん、ぱっつん…ですね」
ああすいません。こんな上品な女性にぱっつんぱっつんとか言わせてしまって。
しかし春日山に入るとするとMTB?でもジャージにレーパンということはMTBじゃないな。グラベル???グラベル行ってこんなところに来るとは・・・。なんか落差がすごいな。
じゃあ、僕もぱっつんぱっつんできまーす!とか言ってお店をあとにしたのですが、社交辞令なのかなぁ?もう勝手に真に受けますけど。
あとから来られたお客さんも徒歩かママチャリ。お店の駐車場はないので、車で来た場合は近くのパーキングに停めるしかないんで、必然的にこうなりやすいですよね。
いやーしかし確かにオシャレだった。エアコンすら見えないように格子戸で隠してあるし。せっかくオシャレにしてるのにエアコン丸出しのお店とかちょっとだけもったいないですもんね。トイレの備品までオシャレで無駄がなかったです。とにかく徹底してました。営業日もシンプルに、月&日!潔いッ!
行ったことないんですけど、北海道のトラピスト修道院とかの中にありそうな、シンプルで清潔で美しい空間でした。ごちそうさまでした。いやー奈良にもすごい店ができたもんや。