いまさら「天気の子」レビュー<前編>
夏の思い出を思い返していますが、その中に、一日だけ一人で映画を見に行ったものがあります。
「天気の子」です。
もうずいぶん経ってしまいましたが、備忘録で。
「君の名は」も一人で見ました。今回も一人。今回は席がちょっと微妙で(笑)
左隣が親子連れ(母と小さい息子)、右隣が女子高生二人組。
その間にあとからおっさんが一人で割り込むという悲惨なスタート(涙)。
お盆の仕事が全て終わって、二日間ヒゲも剃らずに庭木を切ったりしていたので、無精ひげのおっさんが一人で「天気の子」を見に来るという光景。
さっきまでワイワイ騒いでいた女子高生は一気に静まり返り、明らかに、「ヤバいオッサン来た」という目でこちらを見ている気がします。いいじゃないか別に。
しばらく気配を消していると勢いを取り戻し、色々リラックスして猛烈な勢いでしゃべり始めます。参ったな。超席かわりたい。学校で散々なだめている人種の隣で映画とか、「引率」かよ・・・。
来月の予告編で散々盛り上がり、すべての画面に反応する女子高生にすっかり疲れたころに、上映スタート。
そうそう。「君の名は」をどうとらえていたか、から話さねばなりません。前見たときはレビューを書こうと思って、なんかめんどくさくって、書きそびれていました。
あの映画は簡単です。
「MV」なんです。アレは。
私のまわりのオタクで「君の名は」はあまり評価されていません。と、いうより、「見てないんだよ」という人が圧倒的に多い。誰も悪口も言っていないのですが、そもそも興味がない。私も興味がないまま、なかば「義務感」で見に行ってみました。その結論が。
「ミュージックビデオ」
なんですね。
ストーリーもまぁ、あるっちゃ、あるんです。
でもあの映画、RADWIMPSの曲ナシで成り立つかっていうと、それはそれは無味乾燥なものになると思うんです。コレはだからダメ、と言っているわけではなく、「ものすごい、いいMVじゃん!」ということなんですね。
たとえば「ルパン三世カリオストロの城」は「ほのおのたからもの」のOPとEDが最高です。映画のテーマに合致した素晴らしい音楽だったと思います。ですが、「ほのおのたからものありきの映画」ではない。むしろあの映画、他の効果音はすべてTVでもお馴染みのルパンの効果音使ってて、ものすごい制約あるんですね。どんなに宮崎色に染まってても、形式上はアレ、「ルパン映画」ですから。
それに対して「君の名は」に「前前前世」がないのは成立しない。「君の名は」を楽しむための必須の条件がRADWIMPSの曲に同調することであり、ほとんど「君の名は」はRADWIMPSの曲を楽しむために作られた動画だと言えなくもない。私はそれがダメだというのではなく、「ああ、こういうアニメもアリなんだな」という軽い驚きを感じたんです。
もちろん、肝心のストーリーもしっかり練られていて、よくできた話だったと思うんですよ。何より映像が美しかったですし。みんな褒めるでしょ。「映像が美しい!」って。まぁ、それって、作品の褒め方としてどうなの?って思わなくもないですけど。料理の「見た目が綺麗!」って褒めるって、料理を誉めてることにはならないですからね。
でもネットで見る感想のほとんどが「映像が綺麗」「RADWIMPSの曲が素敵」。
もう、そればっかり。
でも、それでいいんだなと。
そういうことを意図して作られて、その通りにみんなが喜んで成り立つ、これはこういうモノなんだな。そこは敢えてこの「流れ」に身を任せてみる、そんな楽しみ方でいいんだな、と。
そうやって見てみると、内容自体も実にありきたりの題材をうまく料理して、見る人をみんなを「切なく」させてしまうという、これがこの監督の真骨頂なんだなと。作品を見ていて「ゴリっ」と当たるような感触が全然ない。それはつまり「個性」というか「主張」というか「こだわり」というか。そういうものがないはずはないのですが、そこを声高に叫んだりは一切しない。テーマ性なんかはある意味音楽に丸投げして、とにかく映画館の2時間を気持ちよく過ぎさせてジーンと鳥肌立てさせて終わろうという。
こういう映画もあるんだなという発見だったんですね。
で、そう思った上で次回作を見に来ているわけですので、私もそこにまんまと乗った「踊る阿呆」だということなんです。私のまわりのオタクは「ピュア」なので、そこはもう、本能的に「コレは俺たちの見るものじゃない」「アニメじゃない」ということが分かっているんでしょうね。だから近づかない。
なので、「アニメじゃない」けど、まぁ、「またMV見てみよう」という不純な動機で、月曜だし1100円で見てみようと思って映画館に来てみたら、新海誠を一番楽しめるようなタイプの人たちの真横で映画を見ることになり、これはこれで「につかわしい」ことなのかなと思いました。
アレ、気がついたら「天気の子」の話まだ何にも書いてないじゃん。
と、いうわけで、肝心の感想は次回につづきます。