コロナ禍のなかで起きた、一つのドラマ②
突然のTizianoさんの引退。
とはいえ、自分の中では、「いつかはズッロ」を考える中で、自分のフレームをかなり絞り込んではいました。
まずは「鉄」。
ズッロにはステンレスのヴェルジネもあります。しかもめちゃくちゃ美しい。でも、ヴェルジネと現在の愛車は見た目的にややかぶる。材質の違いを楽しむのもいいのですが、やっぱり最終的には自転車は「鉄」やろうと。
若干他に浮気するとしたら、奈良の学園前にあった工房のイリベさんの自転車もちょっと頭にありましたが、残念ながらイリベさんは最近お亡くなりになりました。やっぱり悩んでいてはいけないのです。ホンモノはいつまでも待ってはくれないのです。
「鉄」といっても、懐古趣味だけのフレームにはしたくありません。本気で踏めばちゃんと私を連れて行ってくれる「本気の鉄」がほしい。だからこそイリベも選択肢にあったわけです。
そうなると一つの答えとしては「パンタレイ」。これはもうバリバリの鉄です。「鉄の現在」とも言えます。コロンバススピリットの大口径パイプのティグ溶接。「本気の鉄」の解答群の中で、私には最も魅力的に見えるものの一つです。実際ラガッツィでは複数のメンバーがパンタレイを選び、そこに安田さんのオリジナルペイントを加えて、最高の自分だけの一台を完成させています。少し前の「曜変天目」模様のパンタレイが記憶に新しいですね。
しかし、みんなと一緒というのも面白みに欠ける。それと、パンタレイに何度か乗せてもらって、「コレはちょっとだけ硬すぎるかな?」という感触を持っていました。さらにティグ溶接を二本持つというのも芸がない気もしました。
ティグでないなら溶接の選択肢はあと二つ。
フィレットブレイズか、ラグか。
つまりこれは私にとっては、casatiかZulloか、という問いと同じになります。確かに今まで乗った鉄ではcasatiのリネアオロが最も好みの乗り味でした。なんとなくなんですが、今の愛車にかなり近い。
で、私が選んだのはズッロなわけですから、答えは一つ。ラグドフレームです。
うわ、結局ラグのクロモリかよ!ベタベタやないか~。とも思いましたが。
その「基本のキ」の鉄のラグドフレームで、名人の技を味わいたい。しかも本気のレーシングの香りも味わいたい。
そう考えれば、実は答えはとっくに決まっていました。
TOUR’91です。
91年ツールドフランスに実際に走っていたフレーム。おじさんが10人もの職人を雇って年間数千台のフレームを作っていたまさに「黄金期」の作品であります。
このフレームに、パンタレイと同じニオブ鋼のコロンバススピリットを使用。このスピリットの開発にも、Tizianoさんが大きく関わっています。まさにズッロのなかのズッロ。ズッロそのものといっても、いいかもしれません。
最後の最後に、念のために安田さんにメッセージを送り、「パンタレイとツール、私にはどちらがいいと思いますか?」と聞いたところ、答えは、
「すごく難しいけど、その二つで悩めるのは、すごく幸せなことだと思う。俺はまだまだラグじゃあ、おじさんにはやっぱり勝てないなぁと思うから、おじさん引退するし、この場合はツールかな。」
というお答えをいただきました。現在の愛車も安田さん経由で設計されていますので、私の乗り方までご存知の上でのこの答え。
こうして悩みは消え、
「ツール91をお願いします!」
とオーダーを入れました。昨年末のことでした。
まだまだつづく。